第36回極東プラスチック業界懇談会(2010年11月11日 台北)

第36回極東プラスチック業界懇談会が2010年11月11日、台湾の台北市ハワードプラザホテルで開催された。参加者は、韓国(韓国プラスチック工業協同組合連合会KFPIC)23人、台湾(台湾区プラスチック製品工業同業公会TTPIA)38人、日本(日本プラスチック工業連盟JPIF)16人、インド(Plastindia Foundation)3人であった。今回、中国(中国プラスチック加工工業協会CPPIA)は不参加であった。
昨年に引き続き、より深い意見交換ができることを狙い共通テーマを設定し、議論が行われた。
 
<今回の会議日程>
  (午前) (午後)
   T各代表挨拶
Uプラスチック産業動向
Vプラスチックリサイクル関連事項
Wプラスチックのイメージアップ活動
Xカーボンフットプリント(低炭素社会への対応)
・全体質疑応答

T【各代表挨拶概要】
     各国の会長は、この懇談会でプラスチック産業界の懸案と課題について活発な議論を行い、相互の情報交換によって有意義な会議になることを期待すると述べた。
  JPIF 高尾剛正会長代行は、プラスチックの特性を生かした低炭素社会への貢献などプラスの面の広報やそれに向けた商品開発などを強力に進めていく必要性を述べた。
  TTPIA Huang, Hsing-hsiung会長は、両岸(台湾・中国)経済協力枠組協議(ECFA)が本年締結され、来年1月から正式に実施されるので、台湾、中国の経済貿易発展に貢献し、この機会に台湾製品の実力を発展させ、世界に羽ばたいていきたいと述べた。  
  KFPIC Cho Bong-hyeon会長は、グローバル経済の成長のためには、先進国を中心に強力な指導力を発揮して、国際的な協調を実現すべきだと述べた。
 
U【プラスチック産業動向】2009年から2010年上半期の日韓台動向比較
     3国のプラスチック産業規模を簡単に比較したものを表1に示す。  
 台湾・韓国の輸出比率はそれぞれ70%、59%とかなり高く、日本(39%)との大きな違いになっている。一人当たりの使用量は、日本は韓国、台湾と比べて低めである。
   
表1 各国のプラスチック産業規模(原材料ベース)    (2009データ)
  A 生産量 B 輸出量 C 輸入量 D 国内消費 D/A E 人口 D/E
  千トン 千トン 千トン 千トン % 千人 kg/人
日本 10,915 4,222 1,591 8,284 75.9 127,395 65.0
韓国 12,749 7,530 252 5,471 42.9 48,747 112.2
台湾 6,159 4,343 337 2,153 35.0 23,120 93.1
(韓国、台湾の生産量、輸出入量はエンジニアリングプラスチックを除く)
     
     3国のプラスチック原料の過去5年間の生産量推移を表2に示す。
 3国間の比較における最大の特徴は、2008年9月以来の世界経済の低迷による影響度の差が3国間で大きく出たことである。2009年の生産量の対前年比は、日本は84%と生産が下がったが(約210万トン)、韓国と台湾は、対前年比それぞれ107%、108%と生産量が増加した。
  また、2009年は、初めて韓国の生産量が日本の生産量を上回った。(約180万トン)
   
表2 プラスチック原材料生産量推移 生産量 千トン
    2005 2006 2007 2008 2009
日本 生産量 14,145 14,050 14,199 13,041 10,915
指数 % 100.0 99.3 100.4 92.2 77.2
韓国 生産量 10,994 11,278 11,788 11,869 12,749
指数 % 100.0 102.6 107.2 108.0 116.0
台湾 生産量 6,020 5,970 6,417 5,713 6,159
指数 % 100.0 99.2 106.6 94.9 102.3
   
  3国の原料樹脂の2009年上半期と2010年上半期の対比を表3に示す。  
  2010年上半期の国内消費量は、2009年上半期と比べて3国とも大幅に増加していて、2008年9月のリーマンショック以降落ち込んでいた消費量が回復している。国内消費量の増加は日本が最も大きく、台湾、韓国の順となっている。  
  韓国の生産量はエンプラが含まれていないが、10年上半期もエンプラを含む日本の生産量を約30万トン上回っていて、年間でも2009年に引続き韓国が日本を追い越す可能性が高い。韓国、台湾の2010年上半期輸出は、前年同期比-6.0%、-5.2%とマイナスに転じているが、日本は12.2%増加した。
  インドのプラスチックの年間生産量は現在730万トンで、年率15%伸びていて、2020年には1600万トンになると予想しているとの報告があった。
   
表3 プラスチック原材料樹脂上半期対比    (生産:トン、前年比:%)
  原材料生産 原材料輸出 原材料輸入 国内消費
2009 2010 2009 2010 2009 2010 2009 2010
日本 4,719,081 6,062,296 1,979,657 2,222,030 747,722 974,177 3,487,146 4,814,443
前年比   28.5 前年比   12.2 前年比   30.3 前年比   38.1
韓国 6,075,525 6,377,477 3,855,111 3,624,619 93,652 181,572 2,524,326 2,934,430
前年比   5.0 前年比   -6.0 前年比   93.9 前年比   16.2
台湾 3,194,236 3,329,660 2,228,481 2,113,393 217,863 202,640 1,183,618 1,418,907
前年比   4.2 前年比   -5.2 前年比   -7.0 前年比   19.9
 
V 各国の発表のトピックス
 

<プラスチックのイメージアップ活動>

  日本:

温暖化対策へのプラスチックの貢献

   

---プラスチック製品を使用することによるCO2排出削減を紹介

  韓国:

自主協定制度と主な活動の紹介

   

---18品目を対象に自主協定を結び、円滑な回収、リサイクルに努めている。

  台湾:

環境保護団体のPVCへの誤解に対する説明

   

---「PVC及びPVCD(ポリ塩化ビニリデン)のラップ使用禁止の可能性」に対する正しい理解を得るための説明。

 

<カーボンフットプリント(低炭素社会への対応)>

  日本:

日本におけるカーボンフットプリントの概要報告

  韓国:

炭素削減のためのプラスチック産業の発展動向

   

---バイオ又は再生可能な原料を用いた複合材料の開発の必要性の紹介

  台湾:

麦寮工業地区におけるエネルギー、CO2削減の成果報告

   

---企業、工場を跨いだ取り組みにより大きな成果を上げた。

 
(最後に)
 

 この懇談会は3団体による各国のプラスチック産業にかかわる重要課題に関する情報交換により、まずは相手国の状をよく理解してその中から活用できる知見を求め、あるいはより深い情報交換の場を構築する機会とするものである。
 
今後は、インド、中国も参加してくるものと思われる。プラスチック業界の懸案と課題について、お互いに情報交換し、より価値の高い会議に育成していきたい。